顕微鏡根管治療広島
2023.3.22
右下第一大臼歯の根管からの膿の原因、症状、治療法について|歯科医師が解説|2023.03.22
右下第一大臼歯の頬側に膿の出口が形成されています。
しみたり咬んで痛いという症状は無いものの、膿は血流に乗って心臓・心血管に到達し、
心臓病のリスク因子のひとつことは判っていますので、このまま放置することは全身の為にも好ましくありません。
〇の部分に膿の出口(瘻孔:フィステル)が形成されています。
原因として、過去の治療時に取り残した歯の神経(=歯髄)が腐敗・感染して、その結果膿が溜まっていることや
歯根破折、歯根分岐部の歯周病などが挙げられます。
また、歯の周りの歯ぐきが黒くなっているのは、金属切削片によるメタルタトゥー(金属刺青)です。
口腔内で切削した金属切削片が、歯肉の中に入り込んでしまったことで起こります。
オフィス内の歯科用CTによるパノラマレントゲン画像です。
矢印部分の歯根の先端に膿が溜まっています。
このことから、歯髄の取り残しの腐敗・感染によるものと考えられ
治療方法として、根の治療をやり直す再根管治療が第一選択として考えられます。
近遠心的断面です。歯根の周りの黒い層が炎症によって骨が溶けて膿が溜まっている部分です。
歯根の先端に溜まった膿が歯根分岐部に及ぼうとしていますのでエンドペリオ病変とも言えます。
エンドペリオ病変とはエンド(根の先端を由来とした病変)が原因となってペリオ(いわゆる歯周病)の症状を引き起こす病変のことです。
順序が逆であるペリオエンド病変もあります。
頬舌的断面で画像左側が頬側です。
つまり遠心頬側根の周囲に膿が溜まっていることが判ります。
金属を切削しますのでラバーダムを装着して口腔粘膜を保護してスタートします。
通常用いられる12%金銀パラジウム合金よりも明らかに難切削性の金属が用いられていました。
慎重に切れ目を入れて除去しました。
除去した金属の内面です。周囲から漏洩していたことが判ります。
内部のメタルコア(金属支柱)が見えています。これも撤去します。
もともと辺縁漏洩していたと考えられ、切削時の振動で動いたので一塊除去出来ました。
除去したメタルコアです。
内部に漏洩し、汚染されていた(=接着が効いていない)ことで、これほど長いメタルコアがそのまま取れました。
1本の歯から本日除去した金属です。
これをコップに入れて水を飲むことは出来ません。
自分が受けたくない・家族に出来ない治療は患者さんにも行いたくありませんので、
弊オフィスでは天然歯に対する金属治療を完全に廃止しています。
口腔内で金属を削ると、このように金属切削片が出ますのでラバーダムで保護します。
金属と接していた右下第二大臼歯の近心隣接面がむし歯になっています。
細菌付着性の高い金属と接していたことで周囲の歯のむし歯リスクが高められてしまいます。
メタルコアの除去を終えた歯根の状態です。
根管内には過去の治療で充填されているガッタパーチャ(天然ゴムの一種)が埋まっていますので
リモネンを用いてゴムを溶かし、セメントを含めた古い人工物を全て取り除き、
汚染源である未治療部分の歯髄の残骸を取り除くために、
歯根の先端を目指して細いヤスリで未攻略部分を攻めていきます。
ここからは地味な内容になりますが、ただひたすらにヤスリ掛け(ファイリング)していきます。
K・Sさん山口県よりのお越しですので、1回の治療で可能な限り進めます。
4ヵ所をそれぞれ歯根の先端(=根尖)まで攻略出来ました。
膿の溜まっていた遠心頬側根から、膿が拍動を伴って出てきました。(排膿)
今日のところは薬液洗浄し、超音波水流でリンスしたら滅菌ペーパーポイントで吸水乾燥し、
貼薬して綿球を根管口におき仮封します。
次回は排膿の程度を確認し、再根管治療の続きを行います。
根管充填は少なくとも次回は避け、その次の治療時に可能か検討します。
K・Sさん、山口県防府市からのお越しに恐縮です。
この歯が良くなることを願っています。
あとで少し痛みや腫れが出るかもしれませんのでお大事に。
※追記
この歯の根管充填時の治療ケースブログ記事はこちらです。
「ドクドク膿が出ていた右下第一大臼歯の根管充填を行いました。2023.04.13|抜かない治療|広島」
この歯の完成時の治療ケースブログ記事はこちらです。
「メタルタトゥーも除去して膿の出ていた右下第一大臼歯の治療の完成です。2023.04.21」
広島市の自由診療専門歯科 三好デンタルオフィス